京都における「自主的・民主的同和教育」は、単に差別をなくすための知識を伝えるだけでなく、すべての子どもの人権と学習権を保障し、仲間とともに人間らしく生きる力を育むことを目指して、学校現場の教職員・生徒・地域が一体となって進められてきました。
そのめざしていたもの、大切にしてきた姿勢、具体的な取り組みについて、分かりやすく整理します。
1. めざしたもの(理想と目標)
- 差別や偏見を根本からなくす「科学的・体系的認識」の育成 感情的な同情や単なる知識の暗記ではなく、「なぜ差別が生まれたのか」「社会や歴史の仕組みの中でどう残されてきたのか」を客観的・科学的に理解し、正しく判断できる力を育てることを目指しました。
- 「一人も排除しない」すべての子どもの人権・学習権保障 部落問題の解決を、高校全入運動や基礎学力の保障、障害児教育など、あらゆる教育の権利保障と一つになった課題として位置づけました。
- 民主的な社会を担う「主権者」の育成 差別に対して自ら声をあげ、他者の痛みに共感し、仲間と手を取り合って社会の矛盾を解決していける自主的な生徒の成長を促しました[1]。
2. 大切にしてきたもの(教育の姿勢とルール)
- 教職員と学校の「自主性・主体性」 特定の政治勢力や外部団体からの圧力・手出しに頼ったり従ったりするのではなく、教職員が目の前の生徒の実態に基づき、主体的かつ科学的に教育内容や指導方法を研究・実践することを重視しました。
- 「教育と暴力は相いれない」という原則 暴力や威嚇、強要による自己批判などを一切認めず、対話と客観的な事実に即した民主的な合意形成を貫きました。
- 「国民的融合」と連帯の精神 差別する側とされる側を分断・対立させるのではなく、生徒同士、教職員、父母、地域住民が広く手を取り合い、共通の課題として解決に向かう「国民的結合(連帯)」を大切にしました。
3.高校生の自主活動としての部落研活動の支援
京都の人権・同和教育のなかで特に重視してきたのが、高校生自身による自主活動としての部落研(社研・地平線など)活動です。その特徴には次のようなものがあります。
・本音で語り合える「仲間づくり」
学校や日常の中で感じる差別への不安、家庭や生活の悩み、将来への焦りなどを隠さず本音で出し合い、お互いを深く理解して励まし合える仲間関係を築きました。
・地域に飛び出す「現地調査(フィールドワーク)」
本で学ぶだけでなく、自分たちの足で同和地区などを訪れて歴史や生活の実態を聞き取る調査(フィールドワーク)を行いました[4][5]。学んだ内容を自主制作のスライド(市内・山城ブロックの『部落問題は今』など)やレポートにまとめ、校内や全国の集会で発表・討論しました。
・ 進路差別や社会の問題に立ち向かう行動
就職での不当な身元調査や差別選考に直面した仲間を支えてたたかったり、自衛隊の校内説明会をめぐって平和と進路について議論したり(亀岡高校)、校内の暴力追放と民主的な学校づくりを進めたり(田辺高校)、さらにはイラク戦争反対の「九条の会」を結成するなど、平和や民主主義の問題にも視野を広げて行動しました。
・学校全体へ学びを広げる取り組み
サークルの仲間内だけで終わらせず、自分たちで機関誌(『汗』など)を発行したり、文化祭で展示を行ったり、映画『橋のない川』の全校鑑賞やホームルーム(HR)での討論を提案したりして、学校全体が人権について考えるきっかけを作りました。
4. 具体的な実践
- 教科(社会科など)やホームルームでの「部落問題学習」 身分制度の歴史的背景(江戸時代の支配構造など)や現代の社会・雇用問題について、手作りの資料や身近なデータを用いて分かりやすく教え、偏見や誤解を解き明かす授業づくりが進められました。
- 生徒の自主活動「部落研(部落問題研究会)」 生徒自身がサークル(部落研)をつくり、自発的に差別問題や自分の生き方について話し合ったり、学校や地域の枠を超えて交流・討論する活動が広がりました。
- 現場の生活と歴史に触れる「地域実態調査(フィールドワーク)」 教室の中だけでなく、実際に地域(A地区など)を訪ねて歴史や人々の生活、労働の現実を直接聞き取る調査活動(聞き取り学習)を行い、現実から深く学ぶ取り組みが行われました。
- 就職差別の撤廃と「進路(いのち)の保障」 採用時の身元調査や差別的な質問をなくすため、企業や行政に働きかけて「統一応募用紙」を定着させたり、自衛隊勧誘による職業差別問題を追求するなど、すべての生徒が公正に希望する進路へ進める環境(進路保障)を勝ち取りました。
まとめ
京都の自主的・民主的同和教育は、「差別をゆるさず、誰もが大切にされる学校と社会を自分たちの手でつくる」という強い想いのもと、泥臭く実態に寄り添いながら進められた、人間尊重と民主主義の草の根の実践です。
※この文章は、府高同研「部落問題の科学的認識と自主活動の発展をめざして」、『府高40年史』および「Pros&Cons」などをもとに、本サイトの責任でまとめました。
